プレスリリース

March 17, 2025

住血吸虫症など顧みられない熱帯病の製品開発に約17億円を投資 医学生物学研究所、長崎大学などへ助成

公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(以下、GHIT Fund)は、住血吸虫症の診断薬や治療薬を中心とした顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)などの製品開発5件に、合計約17億円の投資を決定しました1

 

住血吸虫症に対する診断薬開発に合計約7.8億円の投資

住血吸虫症は、世界で約2億5,000万人が罹患している深刻なNTDsの一つです。その90%がアフリカで罹患しており、日常生活の中で感染性の住血吸虫幼虫が生存する淡水に接触した際に皮膚を通して寄生虫に感染します2。疾患を引き起こす5種の住血吸虫のうち、アフリカ大陸に広く分布するのが、泌尿生殖器系に寄生するビルハルツ住血吸虫、そして腸と肝臓など消化器系に寄生するマンソン住血吸虫です。現在使用されている診断薬は、感度が低いことや品質に課題があるなど、正確な感染状況を把握することが困難とされています。この課題に対処すべく、米国サンディエゴに拠点を置きNTDsを中心とした診断薬を研究開発する非営利団体Drugs & Diagnostics for Tropical Diseasesが中心となり、臨床検査薬製造販売業者である株式会社医学生物学研究所、長崎大学・熱帯医学研究所、ケニア中央医学研究所、野口記念医学研究所などが取り組む住血吸虫症の診断薬の開発プロジェクト2つに合計約7.8億を投資します。

 

本プロジェクトは、過去の研究成果を活かして、マンソン住血吸虫への適用を目指した迅速診断検査の開発とアフリカのまん延地域などで製品の性能評価を進めていきます。また、ビルハルツ住血吸虫を対象とした新たな血清学的迅速診断検査の開発も行います。この検査は、低コストで使いやすいポイント・オブ・ケア(POC)診断薬として、感染伝搬の遮断や集団薬剤投与(MDA)の終了判断、さらにはその後の疾患サーベイランスに活用されることが期待されています。

 

その他に、以下の3つの研究開発プロジェクトに合計約9.3億円の投資を決定しました。

(1)  VLP Therapeutics, Inc.および長崎大学によるデング熱ワクチンの第I相臨床試験のプロジェクト

(2)  Medicines for Malaria Venture (MMV)とエーザイ株式会社によるチクングニアに対するスクリーニングプロジェクト

(3)  Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi) と塩野義製薬株式会社によるシャーガス病に対するスクリーニングプロジェクト

 

各プロジェクトの概要や開発段階など、詳しくは別紙1をご覧ください。

 

2025年3月18日時点で、35件のプロジェクトに投資しており、内訳として、14件の標的・探索研究、12件の非臨床試験、9件の臨床試験3となります。GHIT Fundのこれまでの累積投資金額は約375億円となります(別紙2)。

 

 

注記

1これらの案件は、2023年6月〜2024年7月にかけて実施した公募RFP2023-002、RFP2024-001(スクリーニングプログラム、製品開発プログラム)の中から選定され、承認されたものです。

WHO(世界保健機関)https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/schistosomiasis 参 照

3薬事申請の段階にある案件を含みます。診断薬開発において、途上国における 患者サンプルを使用した臨床的妥当性の評価を行う段階に入った案件については、表現の便宜上、臨床試験として扱う。